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本編部門 07 イタチモアイの刹那

イタチモアイの刹那

ペンネーム:望月やも

イタチモアイ(漫才コンビ):どーもー!!イタチモアイですーーーー。よろしくお願いしますーーーー。(出囃子と共に元気よく登場)
観客:キャ~~~~~~!!!!(歓声、若い女性が多い)
イタチモアイA(以下、A):いやー、改めてなんやけど、ここ数年コロナ禍で大変やんか。
イタチモアイB(以下、B):あぁ、せやなぁ、それは間違いないな。
A:ほいでな、ツラいけども外出を控えなあかんやんか。だから、ちと引きこもる訓練して、それに慣れていきたいなーと思うてんのよ。
B:・・・いや、今更!?コロナ禍になってから結構経ってるけど!?今からやんの!?
A:まぁ、残り物には福がある、とかいうやんか?それと同じ理屈よ。
B:ゴホン!ちょっと何言ってるかわからない。(低い美声で)
<会場、笑いと黄色い声援>
B:(ペコペコしながら)あっ、ありがとうございます~、、、あっ他人のネタを拝借しました~~~~って、バレてますよね~~~ハハハ、、、、、、、
A:(急に真顔になって)おい!そもそもお前、ツッコミやろ!そんなんいらんねん!他人のネタでウケやがって、しょうもな!
B:なんやねん!いや、マジで機嫌損ねとるんか、お前。ジェラシーの沸点低いな!
A:やかましいわ!早く沸いた方がカップラーメン作る時ええやろ!!あー・・・つまり、その、あれよ、兎に角な、要するに、ん~~~引きこもる練習がしたいのっ!俺が引きこもりになるから、お前はあの手この手で俺を家から引き出そうと誘惑してくれや!!なっ、頼む!・・・・この通りや!!(恐ろしく迅速に土下座する)
B:わかった、、、わかったから!
A:ホンマか!?(目を輝かせて)
B:ああ、お前にそんな熱意があったなんて知らんかってん。だから・・・・・かまわんよっ!(ドヤ顔で)
A:(小声で)だからちょいちょい他人のネタぶっこむな、ドアホ。しかも不完全な使い方しおって腹立つわぁ。
B:(仕切り直して)・・・んー、そういえばなんかAの奴、最近引きこもってるらしいけど、そんなんフツーに考えてアカンやろ。ほなアイツん家いって呼んでくるか。
お、ここやったな。ピンポーン!(インターホンの音)・・・・・やっぱ出てこんなぁ。ピンポーン!おーーーい。Bのおでましやで~~~。お前、急に引きこもって何してんのよー!ピンポーン!!!ピンポーン!!!!
(シーン)
・・・・・・・おお、ホンマに引きこもってんな。しかし、どないしたら引き出せるんや?
ピンポーン!おーい、一緒にゲームでもやろうや~~~!!
(シーン)
ピンポーン!!おーい、一緒にラーメン食い行かへんかーーーー!!
(シーン)
反応ないな・・・・ピンポーン!!おーい、カブトムシ採ってきたで~~~!!!
A:(ガチャ!)えっマジか!?何匹採れたん!?
B:いや、小学生か!それにしたってチョロすぎるやろ!つーか、お前のドア開けるスピード尋常じゃなかったぞ!ここ近年稀にみるスピードやったって。スゲェなお前・・・・・しかし、それにしたって意志弱かったな~~~この調子じゃ、お前に引きこもることなんて到底無理や!諦めろ!
A:う~~~~~む、、、、(腕を組みながら悩む、納得していない様子)
B:諦めろ!諦めろ!今すぐに諦めろ!絶対お前には向かんねん!!人には向き不向きってもんがあるやろ!!無理して不向きなことやってもコスパ悪いぞ!!
A:まぁ、そう言わんと、もうちょっと続けてみようや。ほら、継続は力なりっていうやろ?(やさしく諭すように)
B:やかましいわ、ボケ!急に正論持ち出すなや。カブトムシで興奮してた奴がよう言うわ!ったく。オイ!さっさと戻れや。
(仕切り直して)・・・・ピンポーン!おーぃ・・
A:(ガチャ!)えっ、あれっ、・・・クワガタないの?(がっかりする)
B:いや、欲張りやな!カブトムシだけでは飽き足らず!?虫のことはもう忘れろや!で、お前のその異常なスピード何なん!?心臓に悪いわ!
A:メンゴメンゴ。(手をすり合わせながら笑顔で謝る)
B:????(驚愕して目を見開きながら、きょとんとする)
A:メンゴメンゴ。(手をすり合わせながら笑顔で謝る)
B:(戸惑い、落ち着きがなくなってくる)・・・えっ???
A:いや、だからさ、メンゴメンゴ。(手をすり合わせながら笑顔で謝る)
B:えっ、何っ、、、怖ッ!!!芸人の口からそんなフレーズ出んの!?ウチのめっちゃ陽気なオトンすら使ったことないで!そんなん!!!
A:メン募メン募。
B:・・・いや、「メン募」ってメンバー募集のことやろ!勝手に略すな!話し言葉として伝わりにくいねん!ボケが。お前かてプロの端くれなんやから、それぐらい了解しとけや!!・・・ほら~!会場がシラケとるやないか!!今までの流れに水差しやがって!クソが!!・・・で、何のメンバー募集してんねん。ロックバンドでもやるんか!?ええ、コラ!?しょうもなっ!(不機嫌そうに)
A:いや、俺、もっと尖っててオモロイ漫才したいねん。だから、新たに相方を募集しようかなと思うてさ。
B:(落胆し、天を仰ぐ)・・・・・・あのー、、、ワシ、目の前におるやん。それにしてもそんなはっきり言う?相方としてそんなに不満かな、、、、、?
A:(真剣な顔で)あ、ごめん。
B:(急にテンション高くなる)マジで謝んな!!せめてメンゴメンゴって言ってくれ!かえって凹むわ!!・・・・つーかよぉ!そのお前のマジメな顔、この上なく気味悪いねん!・・・・・ってかさっきから全然引きこもりの練習できてないやないかい!!!
A:えっ、ホンマか?うーん・・・・・・(前方を指さして)あっ!!ミヤマクワガタやっ!!!(生き生きと駆け出す)
B:おー!おー!お前、マジでやる気ないやろ!!コロナとか引きこもりとか、もうどうでもよくなってるやないけ!
A:(急に真顔になって)確かに、正直、どうでも良い。
B:・・・・・いや、お前、マジでやめろよ!!絶対、絶対に炎上さすなよ!!道連れとかシャレにならんぞ!コロナとか引きこもりみたいな社会問題のデリケートさ舐めんなよ!ボケが。首が据わってない赤子の如く丁重に扱えや!
A:いや、サクッと炎上さしてボコボコにされたら、流石に俺でも引きこもれるんちゃうかな~思てな。コスパ高くね?
B:油に火ぃ注ぐな!ボケ!マジやめれ!
A:それを言うなら「火に油を注ぐ」やろ。
B:(手で口をふさぐ)・・・・!!!! いや、また真顔で正しいこというなや!気色悪い。
A:!!!!!!!!!(真顔で観客の方を凝視しまくる)
<会場、笑いと黄色い声援>
B:ギャーーーーーーーー!!!!!きっしょ!!!!(両手で頭を掻きむしる)
<会場、笑いと黄色い声援>

・・・・・・・こんな具合で彼らのステージは進み、あっという間に終幕を迎えた。
どんな類であれ、熱狂というものを生み出す困難というものは、想像に難しくないだろう。
だが、彼らにかかれば、それは蛇口を捻って水を出す程度のものでしかなく、大した苦労を要さないらしい。

一同:お疲れ様でしたー。
C(弟分):今日もかなりウケてましたねー。でも兄さんが引きこもるとかって、あり得ないっすよね。ギャップがマジ半端ないというか(笑)
A:いやー、あれな、適当に書いたネタやってんけど、正直引きこもりとかようわからんわ。
B:ワシら、そういう発想無いからなぁ。家におったとこで何も変わらんし。フツーに考えれば誰でもそうなるやろ。
C:まぁ、どうだっていいっすよ。俺らには関係ないじゃないっすか。
イタチモアイ:(シンクロして)それな(笑)
A:どうでもええねん、いま楽しければな。今が全てや。今が。(タバコに火をつける)先のことなんて誰がわかんねん。アホらし。(タバコの煙を勢いよく吐き出す)

・・・・・・・こうして、彼らはいつものようにその刹那を駆け抜けた。
___刹那の堆積こそが人生であり、それがやがて巨大な歴史となる___
そうした彼らの切実な営みは、最先端技術よりもずっと魅惑的で、底知れぬ程の魔力を孕んでいる。
彼らは正に神がかりの真っただ中である。そこから生み出される推進力たるや、想像を絶するほどだ。
そしてその一週間後、奇しくも彼らは件のウイルスに感染したことが発覚し、ひきこもり生活を余儀なくされることになる_______
 




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