キズナ戦争〜団結の奇跡〜(4回泣けます)
ペンネーム:ぽのか先輩
2060年になると、生活はより厳しくなった。どれほど働いても楽にならない。皆は国に不満を感じた。
「なぜ政治家だけ楽をしてるんだ?」
「不公平だ」
そんな時に国がこんな発表をした。
「全国に引きこもりが200万人います」
皆は引きこもりに不満を感じた。
「なぜ引きこもりだけ楽をしてるんだ?」
「不公平だ」
ネットで引きこもりが特定され、拡散された情報をもとに、皆は家に押し寄せ、落書きをし、家を出た所を殴り、引きずって更生施設に入れた。さらに皆は監視カメラを増やしてくれと国に要望した。そのおかげで監視カメラは国の隅から隅まで設置された。空にも監視カメラを付けたドローンが飛び回り、引きこもりを炙り出すことができ、皆は一匹一匹狩っていった。
だけど皆は物足りなく感じた。日頃の不満を発散するにはまだ暴れ足りない気がするのだ。
そんな時に国がこんな発表をした。
「引きこもりはまだまだいます。ネットで住所を公開します」
皆はヘルメットを被り、「引きこもり反対」のプラカードを掲げ、シュプレヒコールを叫びながら、引きこもりのもとへ殺到した。しかし、引きこもりは手強かった。投石や角材でドアや窓を壊しても、家具や家電でバリケードを張って抵抗した。皆は研究を重ね火炎瓶や催涙弾を手作りし、若者も老人も勇敢に戦った。高校生のボランティアもおにぎりを握って支援した。現地に来られない学生が合唱し、千羽鶴を折り、手紙や千人針を送った。そういった光景が全国に中継されて、体育館や公民館で視聴しながら、ハチマキを締めて、スティックバルーンで応援した。そうしてついに引きこもりを一匹残らず陥落させた。日本中が歓喜し、涙した。
皆は満足した。国もこれで心おきなく国民をさらに搾取できるようになったし、監視カメラで監理がしやすくなった。皆、幸せになった。
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作中、「皆」という言葉が何度も出てきます。しかし、引きこもりについては、作中、「狩る」「引きこもりを一匹残らず」といった言葉にも表れているように、「皆」とは違う生き物として描かれています。分断をテーマとした作品に、キズナや団結というタイトルを持ってきたところは非常に皮肉がきいているなと思いました。国、ひきこもり、皆が、それぞれ精一杯がんばっていたのかと思うと、読者である私も哀しくて泣けてくる思いでした。
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短編ならではの急なテンポで一気呵成に皮肉が投げ込まれた感じで少し爽快感すら感じました。副題の4回泣けますもジワジワと後から味わい深くなってきますね。
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