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文学大賞 短編部門19 壺を買いましょう 作者 みなつき

引きこもり文学大賞 短編部門19

作者:みなつき

世の中には「自己肯定感を高め方」や「自分を大切にする方法」等の本やコーチング講座が溢れている。
いろいろと試して、気が付いた。みんな同じことを言い、書いてある。
マインドフルネスをすれば雑念ばかりが浮かんでくるし、運動すれば三日で終わる。
そんな自分が嫌だからあがいているのに。
ありのままの自分を肯定するって言われたって、どうしていいか分からない。

そんな時、彼に出会った。彼は、「君は君のままでいいんだ」って言ってくれた。
毎晩のように彼とネット上でやり取りをした。彼は私の悩みを黙って聞いて、最後に「大丈夫だよ」と、優しく言ってくれた。

そして徐々に彼に依存するようになった頃、彼からデートに誘われた。
「面白い場所があるんだ」と連れていってくれた場所には、沢山の壺が並んでいた。
「綺麗だろう」と彼は言う。
私にはそれが綺麗に見えなかったので、曖昧に答えると、「もしかして、君には綺麗に見えないじゃないのかい?」と聞いてきた。
「それは、君の魂があがいているからだよ」と彼は笑う。
嫌な笑みだったが、私は彼を失うのが怖かった。
「壺を買って、毎日磨けば、君の魂は浄化されるよ」という言葉に促されるまま、私は一番小さい壺を買った。その額なんと百万円也。勿論ローンだ。

しばらくして、彼から連絡があった。
「壺が綺麗に見えるようになったかい?」
私が黙っていると、「壺が小さすぎたんだね。もっと大きな壺を買えば、きっと君の魂も浄化するよ」と囁く。
私は電話を切ると、壺の中へ「バカヤロー!!ふざけるな!!お前なんか、こうしてやる」と、叫びそれを投げつけた。
壺はガシャンと音を立てて割れた。その欠片を掃除しながら「私も馬鹿だ」と笑いが込み上げてきた。何故かすっきりとした。

私はもう壺は買わない。その代わり、風船を膨らまし「バカヤロー」をそれに閉じ込め、パチンと割る。
なーんだ。それで充分、魂は浄化するじゃないか(笑)
 




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