<冒頭100字>
詩篇
小さな小さな汚部屋にまつわる
小さな小さな説話の集成
それはなんと優雅で
甘美たるものか
語るのも憚られるほどの
神聖なるみことば
見えるもの見えざるものも虚構なり我只管に壁と対峙す
そして壁は押し寄せる
容赦無
<コメント>
HIGA
連作詩とでも言えばいいのだろうか。おそらくは金銭的にも恵まれず孤独に日々を過ごす人物について、日々の生活や思考の様々な側面をバラバラに描いて切り貼りしたかのような作品だ。それぞれの詩においてはっきりとした物語や舞台の共有はなく一見無作為な詩の集合のように見えるが、最後まで読み通す頃には読者たる自分がこの語り手とも言える作中人物に対して深い共感と親しみを感じていることに気づくだろう。つまり断片的に描くことでその空白に対する読者の想像力を刺激し、反対にこの人物の描写に広がりと深みを与えることに成功しているのだ。そして一つ一つの情景も印象的で素晴らしい。貧困や孤独、将来への不安などの切迫した苦悩を寂しく、そして乾ききった力強さで描きながら、その奥に僅かに見え隠れするささやかな希望や幸福への描写は極めて儚く美しい。困難な人生に立ち向かうためには、その美しさを見出すことが最も重要なのかもしれない。
ひかもり
それぞれスタイルの違う詩が並ぶ。そこには引きこもりの愉悦と苦悩が交錯して描写される。
その愉悦、幸福は一見、悲劇的、自虐的なものと捉えられそうだが、その実、本当に肯定されてもいる。もちろん手放しの幸福では無いが、堕落の喜びのような趣もある。そこに引きこもりに潜在する可能性も描かれる。
それは「四畳半の神話」というタイトルに象徴的に込められているようだ。
四畳半という侘しさと懐かしさ。神話という理想と空虚。
その組み合わせの妙がこの連詩に通底するテーマではなかろうか。
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