<冒頭100字>
女は小さな植木鉢を持って歩いていた。鉢には植物、そしてその長い茎の先端にはミニチュアの羊がついている。羊は飾り物ではなく、本物の生き物だ。その生きた羊は、つながった茎ごと、メトロノームのように規則正し
<コメント>
SAMEGAI
引きこもり的な心性と引きこもりの「親」の心性についての考察を含みつつ、小説としても完成度の高い作品であると感じる。
敢えて難点をあげるなら、最後の2行は(あくまで私の好みとしては)要らないかもしれない。とはいえ、まことに良作であると思う。
次回作にも期待しております。
ラッパ吹きさん
羊を通して命(ここでは、単純な「生命」を指さず、心の中にたぎる「魂」の方が適切ですね)が女から少女へ引き継がれました。その後の少女がどう生きていくのか、興味が尽きません。「羊」というと、とある宗教では「罪を償ってくれる存在」と思いますが、女の旅は何かの償いの旅で、絶えた女の命が羊を介して少女に移った、そして少女が次の旅に出る、という解釈も面白いかもしれません。いろんな想像力をかき立ててくれるような作品でした。
ひかもり
タイトルを読んだ時に「植物羊」は比喩表現だと思いましたが、本当に植物羊の話で驚きました。
命とは何か、生きるとは何か、を深く考えさせられます。命とは何かのためにあるのではなく、それだけで価値がある、ということに、このような形での表現方法があったとは。
命は善と悪の彼岸にあり、私たちもそうして生きているのでしょう。
女は植物羊を生かしていたのでもあり、植物羊によって生かされていた。そして、それは不可分なのでしょう。
感服しました。
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