文学大賞 短編部門06
作者:窓際
喫茶店を営む夫婦のもとで、私はバイトをしている。
私はその夫婦が、あまりにも「普通」を体現した人間で、私は驚いた。
でも、その普通とは、何だろうか。
普通の家庭とは、何だろうか。
日常とはいつか崩れてなくなるものだから愛しく幸せであり、そして私はそれに耐えられない。でも普通はそれに浸っていられるのではないかと思う。
たまにミスをして、でもうまくやれてる。完璧じゃないけど、人間として生きるのに何も欠けてる要素がない、そんな夫婦ことを私は普通と呼ぶけれど。
普通と呼ぶにはその普通はあまりにも尊すぎる。
考えがあって、話せて、それに見合った行動できる。これが如何に難しいか。
普通は素敵だなと思うけど、愛すことはできない。
「普通」にも達せていない癖に、「普通」に満足できない。
これこそが最大の罪であり、課題ではないだろうか。
集合体恐怖症だった私が、あるアイドルを好きになって、同じ写真を部屋に所狭しと並べて飾る。
きっと普通の人からしたら恐怖であろう。
引きで見ると魚の鱗のような壁。
アイドルとは結婚できないから。アイドルを好きだから。普通の人を傷つけてしまうから。
だから私は、普通になれない。
いつか、これが普通になってしまったら。
その時は、世界の何も愛せなくなってしまいそうで。