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作品1「つうじょうじん」(ペンネーム:山添博之) へのコメント(3件)

<冒頭100字>

※当作品はフィクションです。実在の団体や人物とは一切関係ありません。

引きこもらずに人生を過ごす人々「つうじょうじん」

専門機関の調査によると「つうじょうじん」の人口は日本国内に約1億人が存在する事が判明した。

<コメント>

HIGA  

現実のマジョリティーたる社会や大衆を異邦人やアウトサイダーといったマイノリティーの視点から描くというスタイルは諷刺小説の王道であるが、この作品では両者の逆転した世界を仮想することでSF小説のフレイバーを加えることにも成功している。主観と客観をバランス良く、クールに織り交ぜたルポルタージュ風の文体も作品によく合っており、特に”病識のない”タダオ氏と校長のやりとりのひりつくような緊迫感とリアリティは素晴らしい。全体にやや理屈っぽすぎるきらいはあるが、誰もが善とする”親への仕送り”をまるで悪行のように扱うというユーモアが作品全体に与えている良いユルさにも着目すべきであろう。
概して”つうじょうじん”があるべき姿で”引きこもり”はそうでないという固定観念に疑問を呈し、読者の現実感覚をも揺るがそうとする試みを持った優れた作品である。個人的にはタダオ氏を語り手とした物語も読んでみたいと思わされた。

 

ラッパ吹きさん

現代日本人に対して的確な指摘をしてくれているように感じました。個人的には、もう少し強めな口調でも全然問題なかったです!その方が、読者がより一層考えてくれると思いました。引きこもり支援に関する悪徳業者は、入寮時に高額な費用を徴収し、暴力的な手段で「更正」を行っているようですね。また、これは経験したことなのですが、引きこもりやうつの方々を知らない一般人の印象は、無知故に「いきなり『わー』っとなったらどうするんだ」でした。その観点を[つうじょうじん]に当てはめた手法は、さすがだな、と興味深く読ませていただきました。

 

ひかもり

「引きこもり」を取り巻く煩わしい現状を、立場を逆転して描くことで逆手に取り、鮮やかに浮き彫りにする胸のすくような作品。
ポイントは[つうじょうじん]についての描写もまたほとんど事実である、というところだ。これは一見フィクションのようでノンフィクションでもある。ということを意識的に、客観的に描くことでユーモアも加えることにも成功している。虚構と現実の狭間をシリアスかつユーモラスに描く手法は、安部公房にも通じるセンスを感じる。
引きこもり文学、というジャンルの登場を待っていたかのような快作と言えよう。

 

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