＜冒頭100字＞

ねえ、知ってる？　春香ちゃん結婚したんだって。私の前に座っている子がそう言って、理子は驚いている。えっ、春香ちゃんってめっちゃ地味な子だったよね。うん、しかもデキ婚。もう子供も産まれてる。うそ。ほんと。

＜コメント＞

SAMEGAI

個人的に、かなり好きな雰囲気の作品。
あつかっている内容と、規定の字数、描写の抽象度が、ちょうどよく合っていて、作品としての完成度も高いように感じる。
あえて難点を挙げるなら、人物の言動を描写するときに、「醜い」（あるいは「美しい」）など、価値判断が強く含まれた形容詞は使わないほうが、文章表現として、より引き締まると思う。
また、描き出されている女性同士の友情ないし親愛の情が、その毒も含めて、やや瑞々しすぎるようにも感じる。どこか「少女小説的」とでもいうべきか。
と敢えて難点を挙げて評したくなるほど、良い作品だとおもう。
次回作にも期待しております。

ラッパ吹きさん

月明かりと2人のやりとりをイメージしながら読ませていただきました。今の日本では、なぜ「虚」を抱え込んで、無理して日々を過ごさなければならないんでしょうか。皆さんも一度は疑問に思ったかもしれませんが、日々の繰り返しをしていくうちに忘れてしまうのかなと思います。そんなことを考えてみました。そらのような存在は、理子（←世間で輝いているように見えた人間の代表例）を精神的に救ってくれるでしょう。自分も救われました。

ひかもり

話がどんどん展開して引き込まれるように読んだ。
夜の雰囲気もリアルに感じられる描写、ふと出てくる猫も象徴的で良い。
友情だけでなく、恋愛感情もすごい想像出来る余地もあって余韻も良かった。
作品の構成も良かったが、心理描写にいちいち共感してしまい、疲れるほどだった。
面白かった。

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