引きこもり文学大賞 短編部門11
作者:ユウ
起きたての私の心臓は動悸で忙しい。私が寝ている間にも働き詰めで残業している脳は、完全にパニックを起こしていてろくに情報の取捨選択もできないでいる。悪夢を見た。
春からの高校生活の始まりで、期待や不安をふくらませた私はがむしゃらに勉強を頑張ろうと心の中で誓っていた。
実際に私は勉強を毎日して、授業中に挙手したりテスト期間は自分で授業内容をまとめたノートを作って、これまでの授業の流れを覚えたりして、定期考査に挑んでいた。
高校2年生でようやくとる事のできた学年1位と記載された紙を誇らしげに眺める私。
…………そしてその姿を眺める夢を見る私。
私はこの夢を悪夢と定義している。
高校生活のいつからだったか、両親の言い合い、親と喧嘩をしたり、友達へのわだかまりだけが私の小さな心の中に大きく占めるようになってきていた。やっとの思いでふくらませた風船の中に、もう1つ風船を勝手に際限なくふくらませられているような気分だった。
高校生活も半分を過ぎ去った頃、身体に不調が出てきた。通院もして、だましだまし過ごしながら私は就活をする事になった。問答無用で就職する事になった私はすぐに内定は貰えたが素直に喜べなかった。
就職して目まぐるしく流れる日々の中、1ヶ月程経ったある日の仕事帰り、気づけば私は泣きながら帰っていた。家路につく重たい身体をのろのろ動かしたその翌日、職場の上司に辞職する旨を伝えた。
そして今は、あの時の輝かしい紙を見る事も怖くなってしまった。あの頃から再び、思うように動かなくなってもう1年、毎日のように悪夢を見る。
実際に私の身体が働くのは寝ている間だけだ。
昔の記憶を再生する事だけに労力を惜しまず、自分自身の事に何一つ着手できないままでいる。
カーテンから覗く明け方の空の向こうを眺めて、私はひとつ涙を流した。