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文学大賞 本編部門03 レッドロケット 作者 江川知弘

文学大賞 本編部門03

作者:江川知弘

※この物語は、未来のとある国のスーパーヒーローのお話。

 私の名はレッドロケット。スーパーヒーローチーム『バスターズ』のリーダーで、その名のとおり、空をまるでロケットのような速さで飛ぶことができ、胸にRのマークが入った赤いコスチュームとマントを身にまとうスーパーヒーローだ! 私の仕事は、困っている人たちを助けること、そして最後まで諦めずに人の命を救うこと。これこそがヒーローの仕事だ!今日も私は空を飛び、パトロールをしていると……。

「きゃー! か、火事よ!! 誰か助けてー! 誰かー!」
 火事です! 火事です! ビルで火事が発生! ビルの中には、女の子が一人取り残されている。
「きゃー! 誰か、誰か助けてー!!」
 火は女の子のすぐそこまで迫ってきている。
 すると、空から赤い光がキラリ! スーパーヒーロー レッドロケット、参上!
「フフッ、もう大丈夫!」
「あっ、あなたは……スーパーヒーロー、レッドロケット!」
「私が来たからにはもう安心だ。それじゃあ、私に捕まって」
「う、うん」
「ここから脱出するよ。ケガはないかい?」
「うん! 大丈夫!」
「よし、それじゃ、急いでここから離れるよ! とう!」
「きゃー!」
 レッドロケットは、空を飛び、無事脱出に成功した。
「助かったわレッドロケット、あなたは命の恩人よ。私を救ってくれて本当にありがとう」
「君が無事で本当によかった。おっと、またどこかで助けを呼んでいる声がする。それじゃ!」
 レッドロケットは、空高く飛び上がっていった。
「ありがとう~レッドロケット~!」

 町の裏に広がる静かな森の中。
「誰か、誰か救急車を呼んでー! お父さんがケガをして動けないんだ! 誰か早く助けてー!」
 そこには大声で助けを呼び続ける男の子と、ケガをしているお父さんの姿。だけど、周りには誰もいない。
「こんな森の中じゃ誰もいないよね……(どうしよう、どうしよう……)しかも、ここは携帯も通じないし……どうしたらいいの……? 誰か、誰か早く、お父さんを助けてー! 誰かー!!」
 すると、空から赤い光がキラリ! スーパーヒーロー レッドロケット、参上!
「フフッ、もう大丈夫!」
「あぁ! あなたはスーパーヒーロー レッドロケット!」
「大丈夫かい? こ、これは……すぐに病院に連れていかないと。あとは私にまかせて!」
「レッドロケット……まさか、本当に助けに来てくれたんだ」
「あぁ、遠くで懸命に助けを呼び続ける君の声がしてね」
「そうなんだ。よかった~本当によかった~」
 レッドロケットは、泣いて喜ぶ男の子とお父さんを抱きかかえた。
「よし、それじゃ、一緒に病院までひとっ飛びだ!」
「あの……レッドロケット」
「うん? どうしたんだい?」
「レッドロケット、あなたは本当のヒーローだ!」
「フフッ、困っている人たちを助けること、そして最後まで諦めずに人の命を救うこと、これこそがヒーローの仕事だ! 君も諦めずに、お父さんのために、懸命に助けを呼び続けてくれた。君もヒーローなれるよ」
「ボクも……ヒーローに?」
「そうだよ。人のために何かをしてあげたり、相手を思いやったりするその気持ちがとても大切なんだ!」
「相手を思いやる気持ち……覚えておくよ!」
「よーし、それじゃあいくよ、とう!」
 レッドロケットらは、空へ飛び上がり、急いで病院へ向った。
「ねぇ、レッドロケット」
「なんだい?」
「ボクもいつか、レッドロケットのように、困っている人を助けたり、人の命を守る仕事をしたいな」
「君ならできるさ、絶対に! そういう子供たちがたくさん増えてくれたら、きっとこの世の中はより良くなるはずだ!」
 男の子とレッドロケットは顔を見合わせ、笑顔を浮かべた。
 その後、レッドロケットは、男の子とお父さんを病院へ無事送り届け、医者に診てもらった。お父さんのケガは、しばらく入院すれば治るみたいだ。(よかった)
 
 
 病院を後にしたレッドロケット。ヒーローの仕事も結構大変。たくさん働いて、もうお腹はペコペコ、喉はカラカラ。
すると、目の前にコンビニが見えてきた。
「そうだ、コンビニでお昼ごはんと飲み物を買おう! トイレもずっと我慢していたし、ちょっと休憩でもするか〜」
 レッドロケットは、コンビニへと入っていった。

だが翌日、SNSにはこのような驚きの光景が広がっていた。

【SNSに投稿されていた内容】

匿名A「コンビニでおにぎり買っていたのレッドロケットじゃね?」
匿名B「おいおい、スーパーヒーロー、サボりか?」
匿名C「ヒーローが仕事中にコンビニ寄っているんだけど!」
匿名D「ヒーローがコンビニのトイレを勝手に使うな!」
(以下省略)

 あなたは、ヒーローが仕事中にコンビニを利用することについてどう思いますか? 私たちは、より良い世の中になることを願っています。
 
 
 
(本作のヒントとなった記事)
出典:日本経済新聞『救急車もコンビニ寄ります、埼玉東部消防が運用見直し』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC173PG0X10C22A8000000/
 




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Opinions

  1. Post comment

    「教師が就業時間にコーラを飲んでいた」と保護者からクレームがあった、という話を思い出しました。
    それだけでも「何が駄目なんだろう」と思っていましたが、救急隊員にまで文句をつける人がいるとは……
    もう少し寛容な世の中になってほしいですね。

    Permalink
  2. Post comment

    最後どのような形に持っていくのか不思議に思って読んでいたら、現実への問題提起だったのですね!
    救急隊員だけでなく、クレームには理不尽なものも多数あり、よくそんな些細なことで怒る元気があるものだと思います……。
    正直、個々のクレームに構うよりも、救急隊員にドーナツをプレゼントするアメリカのような、「あったら嬉しい」ロールモデルを増やしていったほうが近道な気もします。
    現実にないアイディアこそ、創作の出番。どうでしょう、次回作は「あったら嬉しい対応」をテーマにしてみては。

    Permalink

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