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文学大賞 短編部門24 現仮表裏生生乃人(げんかひょうりしょうしょうのひと) 作者 砺波 ユウ(となみ ゆう)

引きこもり文学大賞 短編部門24

作者:砺波 ユウ(となみ ゆう)

朝日は敵だ。
「おまえは動物だろ。何か活動しろ。」と急き立てられる。

夜闇は味方だ。
「おまえ以外は眠っている。自由に行動できる。」と背中を押してくれる。
 
 
人が嫌い。
何を考えているかわからない。
だから気持ち悪い。

仕事なんて無理。
単純作業は気が滅入る。
何より人と接したくない。
 
 
 
パソコン前が俺の定位置。
ゲームで全ての苦痛を飛ばそう。
舞台はMMORPG。

ログインしたらすぐさま挨拶。
フレンド会話は今日も賑やか。
早速狩りに行こうじゃないか。

時間は全て強さに変えた。
仲間を助けられるから。
孤独な俺は、ここには居ない。

この世界なら、呼吸ができる...。
 
 
「受験が近い」
「転勤で環境が変わる」
「彼氏ができた」

引退理由は人それぞれだ。
仲間が去る度、寂しくなった。
新参者は扱いにくい。

独りで狩りする機会が増えた。
MOBからMOBへ効率重視。
そのうち人も狩りたくなった。

所詮ここは架空の世界。
人を狩るのも娯楽の1つ。
ペナルティすら遊びのスパイス。

だけどある時ふと気が付いた。
これの何が楽しいだろうか?

MOBの叫びと人の怨嗟。
どちらもただの文字に過ぎない。
やってる事は単純作業。

楽しさよりもストレスが上。
眼疲労も限界近い。
凝りで背中もガチガチだ。

これって仕事と同じじゃね?
見返り無いのに何をしている?
同じやるなら金貰える方が良くね?
 
 
 
朝日は朝日、夜闇は夜闇。
違うようで、同質だった。
同じようで、違いもあった。

本当は人が好き。
仕事をやれる、自信が見えた。

...この世界でも、呼吸ができる。

 




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