わけあって自殺志願者やめます。<短編部門>
ペンネーム:西園寺光彩
空は雨雲に覆われてあたりはどんよりとした空気だ
一人寂しく、もう使われていないビル屋上の端に立ち、靴を脱いで塀の下に靴を丁寧に揃えた。塀をよじ登り立ってみると町が一望できた。
下の通りを見れば、昼間の買い物に出かけている主婦がご近所さんに会ったのか井戸端会議をしている。彼らにとっては変わらない日常がそこにある。
彼らの人生はまだ続くけど、僕の日常はここで終わる。
コンクリートの上にある僕の足は冷えたせいかブルブルと震えている
小刻みに震える足が可笑しい。そうだよ。僕は、高所恐怖症なのにわざわざ一番苦手な死に方をしようとしている。昔から高いところに立つだけで腰が抜けたように座り込んでいたじゃないか、それなのに屋上とは僕は何を考えているのだろう。
冷静に考えれば、これはないな。やめだ。もっと別のやり方にしよ。
そうだ。太宰治みたいに入水自殺でもいいかも知れない。だが、水中でおぼれ死ぬのもなかなか苦しいと聞くし、リスカ。それもダメだ。僕は、血が大の苦手で血を見ただけで気を失ってしまう。深く切る前に気を失って終わるだろう。
頭の中で何度も自分を殺してきたのに、いざ、本番になってみればうまくいかない。
まるでこれまでの僕の人生そのものじゃないか、本番に弱くていつも失敗ばかりしていた。
ああ、うまくいかん。この、あと一歩の勇気がでんのはどうしようもない。
なんで!僕の人生上手くいかんの?死ぬことも出来ひんし
てか、死ぬ勇気ってなんやねん!意味わからんなってきたわ!
それっぽく最後を締めくくろうか、思たけどあかんわ。無理。アホらし
冷静に考えたら、まだやってへんことめっちゃあるやん!
親孝行もしてへんし、海外旅行、コスプレ、同人イベント、ゲームもやりたいねんけど!やから俺!死ぬのやめます!!
必死に生きたんねん‼生きて‼生きて‼アンパンマンみたいに人を救いながら生きたる!
どんだけ笑われようと俺は人を救う側として生きる!
Opinions
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淡々とした風景の描写から、悲壮感を感じながら読み進めましたが、途中からは何か大雑把というか、なかば開き直るかのような展開に。その変化が、なんだかほほえましく思えました。話の展開は、ある意味笑えるものでしたが、私はアンパンマンみたく必死な人の生き方を笑うつもりはありません。
Permalinkフッと「アホらし」という言葉が出る瞬間が見事!と思いました。
Permalink読みやすく、共感性も高い、立派な エンターテインメント作品だと感じました。
Permalinkタイトルも今っぽくて素敵です。
タイトルの時点で、自殺はしないんだな、と安心して読めましたが、最終的に自殺どころか、人を助ける決意表明までしていて、すごい「生」の勢いを感じました。
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