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文学大賞 短編部門28 私のひきこもり体験 作者 あしざわたつる

引きこもり文学大賞 短編部門28

作者:あしざわたつる

家族は解りあえないという事を家族が教えてくれた。

頭では「何とかしなくちゃいけない」と思ってるけど体がついてこないというのがひきこもりの苦しみ。

そんな状態の自分に
「アンタいつまでそうしてるつもり?!」
「親が死んだらどうするの?!」
「いつまでも甘えるな!」
「自分で仕事探してこい!」
毎日のように母親からの罵倒。
顔を合わせたら説教や嫌味を言われるので、私は徐々に親を避けるようになり、家族を避けるようになった。一緒に食事する事もなくなった。
世界中の人々が自分のひきこもりを知ってて責めている気になった。

犬の世話を押し付けられた。弟の友達が飼ってた犬が産んだ子犬をもらうことを、家族に相談せずに弟が勝手に決めてて飼わされた。
その経緯に納得いかなかったが、ひきこもり無職の身で意見を主張できる筈がなかった。
私が犬の世話をさせられるのは、働いてないからどうせヒマだから、という理由で、家族の無理解に絶望した。
散歩に出たら近所の人とすれ違ったり挨拶されることを想像して恐怖を感じた。
狂犬病予防注射にも一人で行かされ、他の犬を見て興奮状態になった飼い犬に振り回されながら、犬を制御できず迷惑をかけて、
恥ずかしいのと申し訳ないのとで地獄に堕ちたような気分だった。

家族を信じられない者が他人を信じられるわけはない。
介護施設で働くようになっても人間不信が消えず、5年で退職した。

ひきこもり家族会にも参加したが、所詮家族会は家族のためのものであり主に話すのは当事者の親たちで、私は長い時間かけて通ってもあまり話せなかった。
結局、3年ぐらいで行かなくなった。

もう心の支えや居場所は自らの内面に求めるしかないのかも知れない。

 




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